4. 「チャチャルーン・コミュニティー・ハイドロパワー」と「次の夢」
村に立ち上げられた電力会社 「SHRE・CHACHALUNG・COMMUNITY・HYDROPOWER/チャチャルーン・コミュニティー・ハイドロパワー」 に驚かされるのは、この電力会社が「自称の会社」なのではなく、政府に登録されて承認されている本物の「会社」という事です。もちろん、社内には規則があり各家々に電気を送電するための契約書や規約もあります。
私はある人から「ネパールはルールを作るのが大好きな国柄で、立派なルールを作って持っているけど守らないし、ルールがどんなものかも知らない。道路交通法なんかその代表だよ」という話を聞いたことがあります。この会社もルール作りが大好きな国柄を背景にしているかもしれません。ですが・・・
2007 年 11 月、確かに発電所は完成しました。しかし、全ての問題が解決に至ったわけではなく、幾つかトラブルの種も抱えていました。例えば、発電所施設は導水路から電柱の 1 本に至るで、土地所有の村人個人の好意で提供された土地の上に建っています。その土地の所有権はそれぞれの持ち主に残されたままであり、それが後々トラブルに発展する可能性がありました。さらに「その 2.」で触れたように、当初の計画より小型になった発電機はその出力に余裕がなく、各家々が好き勝手に電気を使えば発電機は故障し操業停止になる可能性もあります。もし、彼らがそんなトラブルを事前に避けるため、村人の所有である会社を立ち上げ、土地の所有を個人から移し、発電所を守るためのルールを作ったのだとしたら。また、今後発生するトラブルを解決しやすいように会社を立ち上げたとしたら・・・。
問題にぶつかるまで、その問題自体に気づかない。トラブルになるまで何もしない。そんなことが多かったこの村において、この会社の立ち上げが「先を見通した行動」だとすれば、彼らは私の予想をはるかに超えた精度でプロジェクトを完成させた事になります。私はそれが発電所の完成より嬉しく感じています。
はたして「ルール作りが好き」なのか?「先を見すえての行動」なのか? その答えが解るのはもう少し先です。私は彼らを信じて、その答えを楽しみに待とうと思います。
発電所に遊びにきた子供が「どうやって電気はできるの?」と訊きました。サンチャは嬉しそうに、私を見て言いました「そう思うこと(どうやって?)が1番大切だよな!」と。彼らは次にどんな夢を見るのでしょうか? もっと大きな夢に違いありません。なぜなら彼らは夢を可能にする力を手に入れたのですから。もしかしたら、次に夢を見るのは、「どうやって?」と考え始めた村の子供達かもしれません。
発電機(夢)を運んで来たヘリコプタを見て「パイロット」になりたい、発電所を見て「エンジニア」になりたい、etc.…。 夢の種は蒔まかれました。 中には今、芽を出そうとしている種もあります。無医村であるがために医者にかかれない、治療が遅れる、助かる病気で死んでいく、医療の知識が無いために避ける事の出来る病気にかかる。そんな事が当たり前のチャチャルーンで「医者になりたい」と頑張っている子がいます。いつかその夢が実を結び、ここに報告できる機会が来たら「またか」と呆れてやってください。
現在、私は 35 歳、サンチャは 28 歳です。「まだまだ多くの夢をこの村で見ることが出来きる」。そんな予感がしています。
最後に「SHRE・CHACHALUNG・COMMUNITY・HYDROPOWER」発電所を下に紹介し 4回続いた「報告」を終わりたいと思います。
その前に、少し村の宣伝です・・・。 今年、徒歩 1 日半の位置に飛行場(Kangel/キャンゲル)が開港し、チャチャルーン村へのアクセスがとても便利になりました。もし、チャチャルーン村や、その発電所に興味を持った方、その目で見たいと思う方、いつでも御案内いたします。コレと言った名所も無く地図にも載っていないような村ですが、どうか心配しないでください。 - チャチャルーン村には、他には無い唯一の自慢、発電所が造れる(夢を実現できる)優秀な「素人集団」が居ますから。(中 江 智 映 ・なかえ ともあき)
E-mail アドレス rai_kirat226@ybb.ne.jp