060213

投票率 21%
 カトマンズは大都会です。100万人を超えているといわれています。そして、住民登録(シチズンシップ)を持っている正式な市民は50%強と推定されます。カトマンズの住民の半数弱が住民票を持たない人たちと考えてもいいでしょう。また、混乱している母国を出て、海外に仕事を求める若者が増えています。200万人を超えているといわれています。国境がないようなインドにはかなりのネパール人が働きに出ています。その数は把握できていません。つまり、選挙があっても有権者の半数近くが、居所の理由で投票をしていないということです。この国の一般論と考えていいでしょう。

 先の地方選挙では投票率が平均 21%と聞いています。投票権はどこの国でもそうですが、住民登録がなされた行政区域にあります。投票権のある故郷を出ていて、投票日だからといってそのために戻る人はほとんどいなかったといっていいでしょう。このレストランのスタッフも村に帰るのに数日要する者がほとんどです。選挙のために帰ったものは皆無でした。

 「節分」を過ぎ、ネパールは春爛漫です。ですが、まだ乾季なので農閑期といっていいでしょう。農家は暇です。カトマンズに、大きな町に、出稼ぎの身内を訪ねて居候を決め込んでいる人ばかりです。彼らも選挙のために里帰りはまず考えなかったといっていいでしょう。

 今回の選挙は、国王政権主催です。反国王の旗を掲げる「7政党連合」と国軍(国王の軍隊)と対峙している「ネパール共産党毛沢東主義派(マオイスト)」はこの選挙の妨害を画策しました。ご存知の通り、「暴力的な脅し」を立候補者にも投票者にもかけました。現に、立候補登録しながら取り下げた立候補者も多数に上りました。投票者にも「後の制裁」をほのめかすなどのきわめて危険かつ悪質でした。

 いま、社会主義国以外は、選挙という方法が唯一の市民の審判のための手段になっています。ネパール国王も公約どおり、広く公平に候補者を募ったのですが、旧政党は完全にボイコットし、当然ながら候補者を立たせませんでした。投票もさせませんでした。マオイストはいうに及びません。

 わが国日本でも、地方選挙の平均投票率は低いものです。このネパールでも上記の理由で「低いものだ」そうです。40〜50% と考えていいでしょう。それに、先の「制裁の脅し」が加わりました。危険を冒してまでも(命をかけてまでも)と考えるのは人情でしょう。それにしては、21%は「立派だった」とまじめに思ってしまいます。

 命知らずの立候補者は王政派だけといって過言ではありません。ということは、投票者はすべからく熱烈な王政支持者であったと考えてよいと思います。軟派の王政支持者(どちらかといえば王政支持)は投票所に行っていません。私のあてにならない調査では、もしも彼らが投票したら極めて低くみても15%は上積みされたと思います。通常の投票率 50%マイナス 35%の残りの 15%がボイコット派であったという結果になります。日本の新聞記事の多くはネパール国内での取材はしていません。外電か電話取材で書かれたものに違いありません。伝えられた数字の低さだけで判断し、「国民は王政反対」と結論付けるのはいかがのものでしょうか。見えるものは誰にでも見えます。見えないものを見なければならないのが報道の使命でしょう。

 とにかく、ご存知のとおり大騒ぎの選挙でした。が、済んでしまえば、話題にもなりません。当店のお客さんで、テーブルを囲んで選挙の結果を話題にすることはまったくありません。いまは結婚シーズンです。そちらの話題で、あちこちで笑い声が聴こえます。ネパールは本当に平和な国なのです。(2/13)