ネパール側からのエヴェレストが登りやすくなったといっています。ベースキャンプ上部の氷河のアイスフォールが退化して、ルート工作が容易になったためです。またカラコルムでは氷河の後退が著しく、「2年前には氷河上を歩いたが、今年は氷河が無かった」とのことです。ことほど左様に大ヒマラヤの氷雪は近年急激に少なくなってきています。「地球温暖化」の仕業といっていいでしょう。
山岳氷河の氷が融けて、氷河上にできた湖つまり「氷河湖」が次第に大きくなるのはいうまでもありません。日本の研究者もその調査・測量をしています。この大ヒマラヤのどこにでもその現象は見られます。巨大化してその水を支えきれなくなったモレーンや氷の堰がやがては決壊するのは目にみえています。場所によっては甚大な被害を起こすでしょう。ブータンでは大規模な決壊が起こりかなりの被害が出ています。
ヒマラヤの雪と氷は、昨日・今日降ったばかりのものだけではありません。モンスーンの大量の雨水が何百年、何千年も氷雪として蓄積されているのです。つまり「化石氷雪」です。大ヒマラヤは巨大な貯水池なのです。
コメどころ東アジア、南アジアの大河はすべて大ヒマラヤが源流です。黄河、長江、メコン、イラワジ、ガンジス、インダス、等の大河の水は「化石水」といってもいいでしょう。
その化石水のストックがどんどん減っているのです。くどいようですが「地球温暖化」のためにです。いまなお、多くの氷河湖が「巨大ダム」となって急激に融けた水を溜め込んでいますが、遅かれ早かれ決壊して、それは失われていくでしょう。決壊により、一時には大河の「水かさは」増しますが、しだいに供給が細くなることは必至です。タクラマカン砂漠に「消えた湖」の伝説「ロプノール」もこれが原因とされています。
先に「魔の循環」で記しましたが、東アジア・南アジアは「コメ文化圏」です。古代から大河の恵み「コメ」の恩恵にあずかり、大人口をそれによって支えてきました。そして今なお人口は増え続けています。その余剰人口が工業労働者となり、世界規模の大工業地帯を造りつつあります。中国、タイ、マレーシア、ベトナム、インドなどです。
雨季には「大河」ですが、大ヒマラヤの貯水量が減少しているため、乾季にはその水量は著しく減少することになるでしょう。その結果、河口の三角州などの巨大なコメの耕作地の「地下水面」が低下し、そこに海水が浸み込んでくる現象が予測されます。耕作地の塩分がしだいに増加して、やがてはコメの耕作ができなくなっていくと思われます。
それによって、コメの生産量は急激に減少することは目に見えます。コメ不足による「難民」が出現することも考えられます。われわれは今、温暖化によって海水温の上昇によるとみられる、ハリケーン、タイフーン、サイクロンの大型化、そしてそれによる水の被害に恐れおののいています。が、被害は大きいけれどもそれは一時的なものです。
アジアの大河はあまりにも長く、流れはいまなお悠久です。神のすみか「須弥山」大ヒマラヤは遥かかなたです。そこにある『イノチの甕』が涸れていくことによる「悲劇」について、まだ誰も語っておりません。
|