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前にも記しました。国の内政の最重要の仕事が3つあげられます。国民の教育((義務教育)、国民の健康(健康保険・医療の充実)、国民に仕事を与える(失業対策)だといわれています。わが国日本はほぼ満足にやっていると評価できます。世界のトップといってよいでしょう。しかしこのネパールは以上の3つをなにもしていません。義務教育の制度はありますが文盲率は60%。健康保険は皆無。仕事はありません。 この3つがなければ生きていくのはむずかしい。しかし、ネパール人は生きています。国は与えていませんが、誰かが与えているから生きているのです。
これも先に記しましたが、ネパールには96種族(ネパール政府の分類)います。ネパールの人たちは、基本的に種族、家族で寄り添って生きています。この家族が生きていく人間の条件を与えているのです。
この「ロイヤル華ガーデン」のあるスタッフに訊いたことがありました。『ネパール憲法は民主憲法だね。また、民主主義に反するカースト制度を捨てていないどころか今でもそれに依存して生きている。大いなる矛盾だ。これをどう考えたらいいのかね』。
彼は日本の高校卒に値する「10プラス2」を苦学して終了していました。英文のニューズウイークも本屋で立ち読みしています。国際観、政治観、社会観、生活観はバランスのよい感覚をもっている若者です。結婚もしています。
『王政にしろ民主主義にしろ、私達はネパールという国から何もしてもらったことはありません。病気になったら薬代は家(ファミリー)から、学校にいくのも家から、仕事も家からもらいます(もしくはファミリーの伝で)。ネパールは民主主義国家を15年やってきましたが、国王の政治のときと同じです。あいかわらず私達はファミリーの力で生きてきました。家族を唯一の頼りに生きてきました。つまり私達はカーストで生きているのです。たとえすばらしい民主制度が創られてもネパール人は信用しないでしょう。それよりもファミリーだけを信じて生きていきます。そうしないと生きられないのです』。
私達の「差別の最悪の制度」としてのカースト制度の捕らえ方は間違っているように思えてきました。彼らが生きていける条件を作り出すための制度がカーストなのです。このぎりぎりの条件で生きているからには、他のファミリーを押しのけていかなければならないことも多いでしょう。そこには区別や差別は生まれます。そこだけを強調して捕らえた理解が私達の「カースト制度」でした。
いまでも、非常事態宣言は解かれておりません。多くのネパール市民はそんなことはどうでもいいと考えています。
『私達市民にとって現状は通常です。非常事態でもファミリーは壊れませんから。慌てたのは政治家とお役人だけでしょう。かれらにとっては「非常事態宣言」はほんとうに非常事態です。なぜなら悪徳の限りができなくなりますからね』。わが社の知識人の言でした。
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