050116

2000円で村おこし
 ネパールは山の国です。しかし、意外に森林はありません。低山の南の斜面は森を切り開いて棚田および畑を作ってきました。ネパールのいたるところ段々畑を観ることができます。実に見事な光景です。
 毎年のように雨季に大規模な水害に見舞われるバングラディシュやインドは水害の元凶をネパールにしています。「ネパールの森林が守られていないので、下流の同国の被害が大きい」という論理です。  
 現在のネパールは森林保護を徹底しています。許可なく樹木の伐採は厳禁です。自己所有の森の樹もお役所の許可を得て切り出します。違反者には厳しい罰則が待っています。  
  山の民でも燃料に薪は使えません。原則として灯油かLPGガスを使わなければなりません。カトマンズのような都市では薪は求めることができないといってもいいでしょう。この国にはじめてやってきた30年前は、街のそちこちにきれいに切りそろえた薪を背負った薪売りのおばさんを見かけたものでした。家々から立ち上る朝餉夕餉の煙はまさに少年時代を思い起こされたものでしたが、いまはどこにも見られません。 

 カトマンズでは家庭用燃料は灯油とLPGガスが汎用されています。都市ガスのインフラはいっさいありません。お金持ちの家庭はLPGガスを使います。1000ルピー以上もするシリンダを買うこともできますし、高価なガス器具も使えます。ガス1シリンダ850ルピーも払います。 庶民は一度に高額の出費はなかなかできないものです。したがって少量買いのできる灯油を使います。コンロも安価です。その灯油がこの度大幅に値上げされてしまいました。灯油やガスは公共料金です。国王の作った現政府に対する批判はいっそう高まる気配です。  

 マレーシア、バングラディシュ、ラオスで「炭焼き事業」を手がけている日本の方が当店においでになりました。炭焼きの名手です。  
 ネパールの炭は日本のような窯焼きではなく、いわば消し炭です。廃材や製材屑を燃やして残ったオキをかき出して、水をかけて火を消し、乾燥させて出来上がりです。じつに幼稚というか原始的というか、技術・技能はまったくいりません。ロイヤル華レストランでも「焼き鳥」、「照り焼き」、「焼き魚」、「ナン」を焼く窯「タンドール」にその消し炭を買って使っています。火力は強いわけはありません。一度にかなりの量が必要です。火力を高めるのに送風機を使いますが、あっというまに灰になります。かなり高価で10キロ550ルピーもします。「灰燼に帰す」とはこのことかと思わざるをえません。   

 この国では竹は豊富です。大都市カトマンズのそちこちに竹林は見られます。カトマンズ盆地を離れれば、いたるところに大きな竹の森があります。竹は1年で成長します。こちらの竹の繊維は緻密ではありませんが肉厚です。炭には申し分ありません。竹は自由に切り出せます。いくらでも供給できます。  
 先の炭屋さんは、これに着眼されたのです。燃料不足のカトマンズで「竹炭」が利用できないか。土地を持たない貧しい農民の救済にならないか。貧しい村の「村おこし」ができないか。副産物の竹酢液は人畜無害の農薬に使える。よいとこだらけの竹炭焼きです。  
 竹炭の火力は強力です。火持ちも消し炭とは比較になりません。保存や扱いも楽です。必ずや灯油に代わる家庭用燃料になると考えられます。そして貴重な外貨の節約にもなるでしょう。  

 主な投資はドラム缶400ルピー(600円)、加工費(資材込み)1000ルピー(1500円)だけです。およそ2000円でネパール版「村おこし」ができるのです。炭焼きの技術はネパールにはありません。まず、技術習得用の窯をどこの村につくるか物色中です。  

 純白の雲のような煙があちこちから立ち登る村で、きれいに焼けた竹炭の「おみやげ」を並べて観光客に売る光景もそう遠くないはずです。